安定と不安定
動くということは足を振り出して不安定な状態に倒れこんで行くこと
特にダンスは広い室内を大きく動き回るのが特徴でもありますので、両足で立つ安定ポジションでは不可能です
動く時は下図で示す一点支持が基本となります。
0点支持
ジャンプなどの空中姿勢ですがダンスでは限られたシーンでしか用いられません。
踏み切った後は床からのパワーは供給されませんので、跳んだあとは落ちるだけの不安定な状態です。
ジャンプ
1点支持
片足立ち姿勢です。
慣れないと少し不安定ですが、支持足の反対側の足は完全にフリーとなります。
動く時は支持足の上から重心を外すことにより倒れそうな不安定な状態になりますので、倒れる前に次の足を着きます。
これを交互に繰り返すことにより移動することができます。
歩くとはこの不安定な領域に身体を投げ出していく動作の連続であると言えます。
ボールルームダンスは大きな移動や回転を伴いますから、一脚毎に重心を確実に支持、通過させながらもそこにとどまることなく、中間領域を上手に使って滑らかに移動してゆくことが大切になります。
写真はダブルロンデのシーンですが男女共片足で立つからこそ回転が可能です。
片足での重心通過
ダブルロンデ
2点支持
両足をついて静止している状態のことで安定はするがその場を動けません。
移動するには一脚になる必要があります。
自分では片足ずつ動いているつもりでも支えきれずに次の足を早く着いてしまい、結果として二脚状態になっていることが割に多いので注意が必要です。
このような両足着地の時間が長ければ滑らかな移動は望めませんし、回転量の多いフィギュアになる程ギクシャクしてしまいます。
男女共上体のリード&フォローに意識が行ってしまい足が動かなくなりがちですので、移動中はしっかりと片足の重心通過を意識します。
両足クローズの場面では両足揃えて一休み・・にしないで、軸足を切り替えて次の動きに備えるようにします。
写真男子は両足で立ち女子を支えています。ピクチャーポーズのシーンですから動きません。
その場に静止状態
その場でのピクチャーポーズ
3点支持
両足で支えきれない分を杖などを介して腕で支える両足+片腕、足が弱ったお年寄りや怪我人の姿です。
安定はするが動きが極端に鈍くなります。
女子ターンなどの時、腕で男性に掴まるのも、ラテンで相手のホールドを押す反動で動こうとするのもこういう状態に近いものがありますので極力避けたいものです。
また男子もあまり前のめりになると結果的に女子を杖代わりにすることになり、負担をかけたり動きを阻害することになるので注意が必要です。
写真女子は軽々と片足で立って素晴らしいのですが、ここで両手で男子を掴んだりしますと片足+両手の3点になりますので気を付けたいところです。
動きが悪い
手を使わないで立つ
4点支持
これはもう極端な話、机や椅子などと同じですので論評の必要はないと思います。
超安定はしますが全くといってよいほど動けなくなります。
安定してはいけない
繰り返しますが移動とは重心を不安定な位置に投げ出して行く動作です。
足の上を重心が通過している時はまだ比較的安心ですが、足を外れた瞬間から倒れて行く非常に不安な状態になりますので、早く次の足を着きたいのは人間の心理としては当然のことだと思います。
その不安定な状態の中間部分を経由していかに次の足につなげて行くかは、ダンスにとっても重要なポイントですし、その為のフットワークは極めて大事です。
つなぎの上手な人はダンスがうまい。
スタンダードやサンバなどの移動量の大きい種目になる程、この中間の不安定部分を上手くつないでいく必要があります。
中間部分すなわち右~左足への”つなぎ”の意識はとても大事ですが、
それにもかかわらず皆さん次の足早く着きすぎです。
お相手から”重い”と言われる方は足が残ることによるブレーキや、中間を飛ばして早く着地することにより相手を引きずり込むことが大きな原因と考えられます。
ご自分のバランスにある程度双方が責任を持った上でのダンスからハッピーなひと時が生まれます。
二足歩行は高度な動作
二足歩行とはいっても移動の時は片足ずつになる為に、正確には一足づつの歩行でありこの動作はとても複雑です。
近年ロボット技術の発達が目覚ましいですが、二足歩行を制御する技術は困難で未だ完成していないそうです。
ホンダアシモ君なども床にセンサーがあり特定のエリア内でコントロールされているそうですので、完全にフリーではないようです。
赤ん坊のよちよち歩きも歩行が未発達の初期段階でいささかぎこちないですね。
若い方達はしっかり片足の上(これを1とします)で重心通過させていますから動きに余裕が見えます。
少し年齢が行くと片足から重心が外れ始め1,5位から、高齢者になると両足で支える(2)に限りなく近づいてせわしなく倒れ込むようになり、ついには杖が必要な3に近づいて行きます。
ダンスはいかに「1」のところをキープするかだと思います。
単に前へスムースに歩くだけでも大変なことなのにダンスでは更に後ろに、横に、上下に、回転までありますから、考えて見ればこれはもうとてつもなく複雑で高度なことである訳です。
ですから最初から上手くいかないのは当たり前のことで、練習しないで上手くいくほうがおかしいといえます。
フットワークを意識して丁寧にウォークの練習をすることにより滑らかにつながってきますので、毎回少しの時間をさいてこのエクササイズを行うと効果が実感できるようになります。
トーから入ってヒールから抜く、また逆の動作を丁寧に行ってください。
あたかも一筆書きのようなイメージです。
緑・・足の上で比較的安定
青・・中間部分で不安定